成功とは道のことである。生きるとは過程のことである

人の生き方には何かを追い求める生き方と何も追い求めない生き方とがある。日常の枠組みで見たら、誰もが何らかのモノやコトを追い求めているのかもしれない。

それはたとえば彼女がほしいということかもしれないし、お金がほしいということかもしれない。

でも誰もがそこに向かって歩いているわけじゃない。

 

彼女がほしいと思うこと、お金がほしいと思うことと、実際にその目的に向かって歩くことの間には大きな大きな差異がある。世の中のほとんどの人たちは、ただ生きている。

 

夜の池袋のカフェでパソコンのキーボードを打ちながらを窓の外を眺めていると、そこには街行く女の子を物色する男がいた。

 

それはもうずっと前の俺の姿そのものだった。彼の姿は東京に来てはじめてナンパをしようと思った俺そのものだった。

 

カフェ内の話し声や食器の音が途端に消え去って、街の色もモノクロになった。

 

 

「やぁ」と俺は言った。

 

彼は自信がなさそうにはにかんだ。

 

「東京の大学に通っていてサークルにも入ったんだけど彼女ができないんだ」彼は言った。

 

「そっか」俺は彼に言った。

 

「何かしなきゃいけないと思って、居ても立っても居られなくて、ナンパをはじめたんだ」彼は言った。

 

「うん」

 

 

「でも誰にも相手にされないんだ。1人声を掛けるのにだってすごく緊張して、ようやく声を掛けてもゴミを見るような目で見られて無視される」そう言って彼は自虐的に少し笑った。

 

 

「うん、わかるよ」

 

 

 

「ナンパは楽しい?」俺は彼に聞いた。

 

「楽しいというよりかはつらいかな。だっておれはそもそもコミュニケーション能力が低いから、本当はナンパなんか向いていない」

 

「それなのにやってるんだ?つらいならやめたっていいのに。誰かにやれって言われたわけでもあるまいし、ナンパなんかやっても誰にも誉められないし、むしろ軽蔑の対象だよ?」俺は彼に言った。

 

 

 

「それだからやってるんだよ。今おれはナンパに人生を賭けている。少しでも時間があったらナンパしたいと思っているし、どこにいてもなにをしていてもナンパのことを考えている。朝まで街中を歩き回ってもちっとも疲れないんだ」彼は言った。

 

 

「うん、知ってる」

 

 

「1つだけ言っておくと、きみはきっと出会えるよ」

 

 

「誰に出会えるの?」

 

 

「誰にでもさ」

 

 

少し間を空けた後、彼はクシャっと笑った。

 

 

カフェ内の会話がまた聞こえてきた。

街もまた動き出した。

 

彼はもう見えなかった。

 

Walk the road.

出会えるからきっと。誰にでも出会える。

成功とは歩くことそのものなのだと

きみは知っているのだから。

 

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