たんぽぽの綿毛(発芽編)

ナンパ実録

俺のナンパ観を変えてくれた彼女と出会ったのは、夜になれば吐く息が白くなり始めるそんな季節だった。

俺は冬のナンパが好きだ。

冬の寒い夜、みんながみんな凍える手をポケットに入れて、耳を赤くして、明かりに集まる昆虫のように我先にと暖かい場所へと身を放り投げていく。

 

俺はそんなみんなに逆らって冷たい夜の街で一勝負仕掛けようとしている。実を言うと俺だって、なんでこんなことしてるのかを見失う時もある。

気を抜いたら某アニメのはなたれ坊やになってしまうような寒さの中、仕事でもないのに道行く人達に声を掛ける。仕事じゃないからこそ声を掛けているのかもしれない。

そんな寒空のもと、気付けば時刻は深夜0時をまわっていた。

熱中し過ぎて気付いたら何時間も経っていたといえば語弊があるだろう。そうじゃなくて、何の成果も出ずに、かといって大人しく帰ることもできずに、気付いたら左手の時計は日付が変わったことを俺に告げていた。

 

彼女と出会ったのは

それからもうちょっと夜の街を彷徨った後のことで、もしも俺がストリートナンパ密着の取材班を連れていたとしたら今日はもう何も起きないっすねとみんな帰ってしまっていただろう。

それで俺はもうちょっとだけやってみますとみんなと別れていただろう。

 

ナンパでは奇跡が起きる。

俺はこの考えを固く信じている。

 

それは俺の過去の経験から導き出された信条であるし、こうあってほしいという願望でもある。だから俺は自分がもう無理だと思う瞬間まで勝負を諦めないようにしている。

 

そこにたまたま彼女が通りかかって、もしも俺が今日は全然うまくいかないから何か食って帰ろうと選択していたら起こり得なかった出来事が起きた。

 

これだから俺はますます奇跡を信じてしまって、今後もまたけっして少なくない時間を無駄にするんだろう。

 

でもいいや。

 

何もかも許せてしまう。

 

見知らぬ人にされた舌打ちも

俺自身のダメさ加減も

 

終わりよければすべてよしと思えてしまう。

 

終わりよければ全てよしってさ

最高だよ。ナンパのためにあるような言葉とすら思う。

 

 

現実は思い通りにいかないとみんな思っている。

俺だってその心構えは概ね正しいと思う。

 

だけどこの時は違った。

最後の最後に理想的な女の子に出会った。

 

彼女はかわいくて優しくて、まさに理想的な女の子だったのだ。

 

しかも俺は、その日それまで失敗続きだったのが嘘だったようにめちゃくちゃスムーズに彼女と会話を進めることができた。

 

深夜の街中で、もうあきらめかけたその時に、こんな女の子がいたらいいなと思うような女の子に出会えて、しかも連れ出せる確率はどれだけ低いんだろう?

そんなことどうでもいいがきっとめちゃくちゃ低いはずだ。

そんなこと考えると俺の背筋はピンと伸びて、心なしか鼻も伸びたような気さえしてくるw

今思えば、モテる奴がよりモテるようになるのはこの自信からなんだろうな。

 

顔はめちゃくちゃかわいい。平井理央に似てる。

黒髪

肌は白い

Dカップ

性格いい。ノリがいい。一途に尽くすタイプ。

 

静まり返った深夜の街中で、少しだけ他愛のない会話を交わした後カラオケ打診をすると、彼女は俺が吸い込まれてしまうような笑顔でいいよと言ってくれた。

 

たんぽぽの綿毛(開花編)